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もしこれがドラマとか小説とか映画の世界だったとしたら、俺はきっとその世界で笑っていただろう。
けれど俺の居る世界はただの殺伐とした面白みも何もない現実だけが平淡に並べられた、そんなくだらない世界だ。
だから俺は目の前にいるその人に思いを告げることも、抱きしめることも何も出来ぬまま俺はこの思いを忘れてしまう。
忘れたくないけれど、忘れなければ俺は前に進めない。
嫌と言うほど俺はそのことを理解していた。 「光、なにしとんねん」 「・・・・」 と俺は物覚えついた頃からいつも一緒にいた。 俺にとっては家族のようなもので、にとっての俺もそんなようなものだった。 けれど俺は男では女だった。 いくらが無愛想で素直じゃなくて色恋沙汰に興味がなかったとしても、俺は男でアイツは女。 嫌というほどその事実を思い知らされたのは、中学二年の春だった。 学校中に立った一つの噂が原因だった。 「・・お前さあ、」 「なんやねん」 「・・・ホンマに白石部長と付き合っとんのか?」 白石部長とが二人で手をつないで帰っていた、白石部長とが休日に二人で出掛けていた・・・など様々な目撃がありいつしか二人が付き合っているという噂が立った。 俺もその噂を早いうちに聞き、はじめて知ったときは少しだけ驚いた。 あのが、誰かと付き合うとかそんなことするなんて思ってもいなかった。 けれど、所詮、それだけの感情だった。 それ以上のことを思ったり感じたり、しなかった。 「・・・光には関係ないやろ」 少しずつ、少しずつ、俺のこころが不安定になりだした。 白石部長と部活で顔を合わすたび、白石部長を視界の外に追いやるようになった。 と教室で顔を合わすたび、をずっと目で追いかけるようになった。 ああそうか、俺はが好きなのか・・・それを案外すんなり俺の頭は理解した。 「関係ないことあらへんやろ。白石部長もも俺の関係者や」 「・・そんなん言うたかて、関係あれへん」 二人で帰るなんて、いつぶりだっただろうか。 白石部長とが付き合っているという噂が立つ前だったような気がする。 が口にしなくても、二人の噂はどう考えても噂ではないということがわかった。 「あの人のどこがええんかわからへんわー」 「肯定してへんやろ」 「否定もしてへんやん」 はしかめっ面をして、「アホ」と呟いた。 それに「お前のがアホや」と返すとは黙りこんだ。 の横顔をぼんやり眺める。 小学生の頃は俺もと変わらないくらい背が低かった(けど、その差はいつしか大きくなっていた)、 兄弟と間違えられるほど顔が似ていた(今は恋人に間違えられることの方が多い)。 いつの間にか俺ととの距離は開いていたんだと直観的に感じた。 の黒髪が夕日に映えたのを見て キレイだ と思ってしまうのもその表れなのかもしれない。 それが無性に、さみしく思えた。 |
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