|
せかいが消えた。 「君はおかしなことを言うね。あるじゃないか、君の頭上に、目の前に、足元に、背後に。 君は世界に囲まれているじゃないか」 これがせかい? おかしなことを言うのはアンタじゃないの。 こんなに白くて、狭い箱が、せかいなわけないじゃない。 「ここは世界だよ。 もっとも、この世界は君の世界ではない。 もちろん君の望んだ世界でもなければ、君の存在していた世界でもない」 二人が入っただけでぎゅうぎゅう詰めになる箱なんて、せかいなわけない。 私の知ってるせかいは、もっと広くて美しい場所だった。 こんなところ、せかいじゃない。 「ここは俺の世界。俺の望んだ、俺だけの世界。 俺の望んだ世界は白くて小さな箱の中みたいな狭いところで、君、吉原さんと二人だけの世界なんだ」 男、上田はそう言って、くすりと笑った。 なにそれ、私はアンタの願望に巻き込まれたってわけ? 上田は中学のとき一緒だった元同級生だ。 高校に通うようになってからは連絡をとったことも会ったこともない。 これといって接点も何もなかったから、当然のことだ。 「俺は吉原さんが困っているところを助けてみたかったんだ。 中学の時、吉原さんが困っているところを助けてみようとしたけど、君は友達が多いから俺じゃなくても誰かが助けてくれたよね。 それが悔しかったんだ、だからこの世界に君を引きこんだ」
|