イブキ






                            かわだりょうご










  プロローグ






子供の頃、銃や戦闘機に憧れた。

私は女の子だったから、周りの大人達はあまりそれを快く思っていなかったのだろう。今にして思えば、私の誕生日は決まって、少女趣味の物ばかりだった。

差別だ。

いつだったかの誕生日に男の子が買って貰うような銃が欲しいと喚いたのは、構って欲しいがために親に心配かけようとしたとか、反抗期だったとか、そういうんじゃない。ただ単に、「かっこいいな」って思っただけなんだ。 私にとって、銃や戦闘機はファッションだったんだ。

だから、同い年の子が芸能人に夢中になるように、私もテレビから流れる連合軍の活躍を夢中になって見ていた。 精密誘導爆弾が目標に命中する様を見て、ミサイルが迎撃ミサイルによって撃ち落とされる様を見て、作戦がいかに順調に進み、犠牲者がわずかであるか自信たっぷりに説明する外国の偉い人の演説を見て、私は満ち足りた気持ちになった。

ただ、その映像がカメラマンを遠ざけた代わりに、軍が撮影し提供した、血なまぐさい情景は一切ない、消毒された映像のオンパレードであると気づいたのは随分後になってからだった。

何が平等で、何が正義で、何が平和で、何が自由なのか。何一つわからないままに、嘘で世界を固めていた。

正しい平等や、絶対の正義や、本当の平和や、真実の自由が、私の中でひとりでに肥太り、嘘を語りだすのにはそう時間は要らなかったと思う。

嘘は都合よく、どこまでも私を気持ちよくさせてくれた。

劣情を肥大させ、自己満足は丸々と太り、理想こそが現実だと、本気でそう思えた。

ただ結局、自分自身、嘘とわかっていた。だから、真実が肉を削げ落とすのを感じ、信じて疑わなかったそれら全ての言葉に稚拙な響きと、思慮の浅さを感じるようになっていた。

平等は、ただ差異を浮き彫りにし、正義の敵は悪ではなく別の正義で、平和は全ての思想の隣に横たわり、争いを呼び込む。

現実はどんなにか下らないことか。

透き通る海も、焼けるような夕焼けも、誰かが口ずさんでいた歌や、昔見た小さな絵本もある、この下らない世界。

この下らなくも愛おしい現実に、私は、やっぱり、どうしようもなく、嘘であろうとも、平等や正義や平和や自由、ありもしない本当の真実を、求めて願うばっかりなんだ。











                                       第一章



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